森見作品では『太陽の塔』が一番愛おしい

私は大学時代を京都で過ごした。近畿地方に縁もゆかりも無かった私が、そうだ 京都、行こうとなったことには、もちろん理由がある。1つは当時毎日利用していたJRによる刷り込み、そしてもう1つ(こちらの比重が9割)がこの本との出会いである。

 

太陽の塔 (新潮文庫)

森見登美彦太陽の塔』(文庫版なのがポイントです。)

 

季節は夏。

本屋や図書館でたらたら過ごすのが好きで、そのくせ変な本(れとろぉな雑誌など)ばかりめくって、碌に文章を読まなかった私、当時高校生。いつもの本屋の文庫コーナーに、とーんと置かれた文庫本の帯、「すべての失恋男たちに捧ぐ、爆笑妄想青春巨編」。

思い切った帯に、ついにやにやした。それでも「爆笑」は言い過ぎだろう、と思いつつ本を開き、数秒後には鼻水吹き出しそうになっていた。わたし女子高生(当時)なのに。とにかく衝撃の出会いだった。

 

お外でぶふぶふ言いながら読む訳にもいかないので、即会計へ向かった。家に到着してすぐ、頭から読み直してぐふっと笑い、最後まで一気に読んだ。

清々しい気持ちで本を閉じ、小さい頃から作文が大嫌いだった理由に初めて気付いた。(齢十六、七にして、である。たぶん遅い。)「文章」を堅苦しく考え過ぎていたのだ。触ったら怪我しそうなかちっこちの物体。でもこの日偶然出会ったこれは、触ったら案外ぶりゅんぶりゅんしていた。心地良く、楽しい。他に代え難い大事な一冊となった。

森見氏の本から湧き出る何かを吸ってしまったらしい。この出会いで私の文章観が変わったと同時に、清楚系女子高生からニヤニヤ顔で本を薦める変な女へとデチューンした。そして、物語の舞台となっている京都に住んでみるべく、そこそこ真面目に受験勉強に取り組むようになった。

そんな訳で、高校から大学にかけての数年間に渡り鞄の中に居続けたこの本は、間違いなく私の青春を一番見ている。合宿にも修学旅行にも持って行ったし、受験シーズンも持ち歩いていた。京都の大学に入学して以降は、聖地巡礼的なこともやってみた。生まれて初めて布製のお洒落なブックカバーをかけてあげたのもこの本だ。

衝撃の出会いから何年も共に過ごし、私の脳内本棚では常に特別な位置にあるこの本。「青春の一冊」のテーマで真っ先に思い浮かんだ。

 

さて、今更ながらどういう作品かというと、

冴えない京大生が主人公の物語で、独特なノリの語りにニヤニヤぞくぞくできる作品である。生々しい駄目青春っぽさが魅力の1つなのだが、実はファンタジーノベル大賞受賞作品。叡山電車などなどを絡ませた不思議空間は超素敵だ。

十代の若者は全員読むべし。もちろん青春を思い出したい全ての皆さまも。

 

特別お題「青春の一冊」 with P+D MAGAZINE
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